こんにちは。
うつわと道具や ころは です。
お客さんからよく、「この作品は何焼きですか?」と尋ねられることがあります。
当店はいわゆる“〇〇焼”と呼ばれる作品の取扱いは少なく、
「作家さんの作品なので、〇〇焼とくくられた作品ではないのです。」
と、お答えする事もたびたび。
でも、確かに“〇〇焼”の定義を知らないと分からないことですよね。
今回は少しむずかしいテーマになりますが、“〇〇焼”についてご紹介致します。
やきものは全て、“〇〇焼”のくくりに当てはまると考えていませんか?
確かに、現在ほどの流通が発達していなかった昔はそう考えても間違いではありませんでした。
原料となる土は、昔はその土地でしか手に入りませんでしたが、ネットが普及し始めてからは産地に行かなくてもどこからでも原料を手にすることができるようになりました。
瀬戸や信楽の土を使って沖縄や北海道で作陶されている作家さんも珍しくありません。
また、美濃の土を使って美濃地方で作陶されていても、“美濃焼”に当てはまらない作風の作家さんもいらっしゃいます。
この様に、全国の土が簡単に入手できる現在では、“〇〇焼”の定義はとても難しいと言えます。
もちろんネットでも、その土地に行っても入手できない産地の原料もあります。
採れる量の限られた原料は、その産地の伝統を守っていく大切な資源でもあります。
しかし、現代は基本的に自由に好きな原料を使い、オリジナルの技法を生み出したりと形式に捉われず制作する陶芸家が多くいるので、やきものの産地にこだわる必要はないといえます。
とはいえ、各産地の伝統的なやきものについての知っておくと、土や技法のことも分かってとても便利ですね。
“〇〇焼”は、土が取れた場所や窯のある所在地、絵付や釉薬などの用いられた技法や様式で決まります。
備前焼、萩焼、有田焼、清水焼(京焼)などは、それぞれ備前市、萩市、有田町、京都の清水寺周辺といった産地の名前からきたものです。
昔は、今のように流通が発達していなかったので、土の産出するところにやきものの産地が生まれました。
備前市で取れた土を使って、備前市にある窯元が作ったやきものが、備前焼と呼ばれていたということですね。
それに対して、釉薬(※1)などの技法の特徴から名付けられたものもあります。
乳白色の志野焼や緑色の織部焼、淡黄色の黄瀬戸(きぜと)などは、釉薬の特徴から名前がつけられた代表例です。
ちなみに、織部とは人の名前で、安土桃山時代の茶人であり、武人でもあった古田織部のこと。
織部焼とは、彼の好んだ斬新な作風のものを指し、緑色の釉薬のもの以外も含まれます。
産地名であり、技法の名前であるのが、唐津焼です。
唐津市で作られている焼き物だけでなく、唐津風の技法を使った焼き物もまた、唐津焼と呼ばれます。
やきものの世界では、厳密な原産地表示が決まるわけではないんですね。
・産地が名前になっているもの
・釉薬が名前になっているもの
以上、“〇〇焼”についてご紹介致しました。
この定義を理解していると、やきものの見方も変わってきますね。
(※1 釉薬とは、素焼きした後、生地の上からかけて、ガラス状の薄い膜を作るうわぐすりのこと。)