うつわと道具やころはのBLOG

うつわと道具やころはのブログです。 生活に寄り添った“作家のうつわ”と“台所道具”についてご紹介しています。

魅力がいっぱい!豊かな表情の「石もの」(磁器、半磁器)のうつわ

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こんにちは。“ころは”店主のミキです。

 

今回は

【魅力がいっぱい!豊かな表情の「石もの」のうつわ】

をテーマにお届けします。

 

皆さんは、日常に使う食器として「石もの(磁器・半磁器)」に対して

どんなイメージをお持ちでしょうか。

 

陶器と比較すると、イメージしやすいかもしれません。

 

例えば、

 

陶器と比べて、つるりとしたガラス質の透明感、

揃いの器の均一感、美しい絵付け、シンプルなフォルム

 

その反面、

 

陶器と比べて、温かみが感じられない、

独特の唯一無二感に欠ける、絵柄が目立ちすぎる、個性が感じられない

 

いかがでしょうか。

 

「あ~、そんな感じ」ってイメージではありませんでしたか?

 

実は、そんなイメージを覆す、

表情豊かな「石もの」のうつわたちは沢山あるのです。

 

今回は、作家が施す技法や装飾により、

様々な魅力や個性が光るうつわの一部を紹介したいと思います。

 

その前に。

 

磁器と陶器って、何が違うの?別物なの?

 

と疑問をお持ちの方は、まずはこちらをご覧下さい↓

 

korohacurry.hatenablog.com

 

 

korohacurry.hatenablog.com

 

 

磁器の代表的な技法と言えば、藍色一色で文様が描かれた染め付けや、

有田焼や九谷焼に見られるような色絵が有名ですね。

 

では、その他には、どんな表情を施された磁器があるのでしょうか。

 

 

重みが優しい、分厚い磁器 - 人見和樹さんのうつわ -

 

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磁器と言えば、陶器と比べて素地の手触りが薄いものが殆どで、

「工場で型にはめて、同じものを大量に作ったのかな?」といった、

人の手の温かみを感じられないものも多いかと思います。

 

ところが、ずっしりとしたその重さに安心感を覚えるような、

肉厚で温かみが伝わる磁器もあるのです。

 

写真は、人見和樹さんのうつわ。

 

厚めに形取られた素地は丸みを帯びており、素朴な印象が魅力です。

 

また、手に取れば厚めに掛けられた釉薬の滑らかな質感が手に馴染み、

ずっしりとした優しい重みに温もりを感じます。

 

表面に散る茶色の模様は、

素地や釉薬に混ぜられた鉄粉が窯の中で変化したものです。

 

それらは、白い素地や釉薬がもたらす均一な透明感に、

深みや奥行きのある唯一無二の表情を与えています。

 

 

洋菓子のような心をくすぐるイッチン描き - 前田麻美さんのうつわ -

 

 

 

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「イッチン描き」とはスポイト状の容器に粘土を入れ、

絞り出して文様を描く技法のことです。

 

クッキーやチョコに文字や模様を描くときの

デコレーションペンをご想像くださると、そのイメージに近いかと思います。

 

その技法を使い成形した素地の表面に

一つひとつ、描いていきます。

 

それは柔らかい線状となり、立体的な模様として浮かび上がります。

 

写真は、前田麻美さんのイッチン描き。

 

前田さんの、薄く華奢な素地に描かれる模様は、

まるでレースのように繊細で、

洋菓子のように甘く愛らしい感じがしますね。

 

そして、同じイッチン描きの花模様でも、

釉薬の色によって、表情に深みが増します。

 

灰青釉の水が滴るような透明感、灰琥珀の柔らかで上品な温かさ、

ブロンズのカッコいい愛らしさ。

 

前田さんの表情豊かなうつわを手に取ると、

 

物語性を持った様々なイメージが湧き上がります。

 

 

 

釉薬で模様が浮かび上がる型打ち - 斉藤幸代さんのうつわ -

 

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磁器には、生乾きの素地を石膏型に被せて成型する、

「型打ち」という技法があります。

 

ろくろでは難しい非円形(八角鉢や輪花皿)に成型でき、

手間は掛かりますが、複雑な形のうつわを作ることができます。

 

写真は、斉藤幸代さんの作品。

 

植物や自然をモチーフにした、立体的で繊細な模様が目を惹きます。

 

これはどのような技法で表現するのでしょうか。

 

「型打ち」の石膏型に模様を彫り、そこに素地を押しつけることで、

うつわの表面に模様の凹凸ができます。

 

その素地に釉薬を掛けると、凹部に釉薬が満たされ、

凸部には釉薬が薄く掛かり、模様が立体的に浮かび上がるのです。

 

その立体感が際立つのは、模様の輪郭が丸みを帯びることなく、

凹凸がくっきり鋭く描かれ、

釉薬の濃い部分と薄い部分で色味の差が大きくなるためです。

 

陶器の陶土に比べ、やや硬くコシがある磁器土だからこそ、

このような美しい立体感を生み出せるのです。

 

また、同じ形、同じ模様でも、釉薬が変わると雰囲気もがらりと変わります。

 

オリエンタルなイメージ、ノスタルジックな印象、骨董品のような風合い。

 

斉藤さんは豆皿を中心に作られているので、

色違いの器を並べてそれぞれの面白みを味わうのも楽しそうですね。

 

 

 

型にはまらない、一点物の魅力 - 藤村佳澄さんのうつわ -<

 

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手作りの磁器であっても、量産を目的として石膏型などを使い、

同じ形のものを作る場合が多くありますが、

型をなるべく使わず、一つひとつ、

手彫りで形を作り上げられているものもあります。

 

写真は、藤村佳澄さんが一点ずつ丁寧に彫り上げたうつわたち。

 

日常の食器として扱いやすい磁器の良さに加え、

手作りの一点物としての個性を大切にしたいからこそ、

手彫りの手法を取られているそうです。

 

そして、手彫りだからこそ、どのうつわも、丸みある、

柔らかな輪郭を持つフォルムが生まれるのでしょう。

 

白マットの釉薬をかけたものは、

手にしてうつわの縁を指でなぞると、

温かみを感じる優しい質感があります。

 

一方、ブロンズ釉のものは、柔らかなフォルムに、

使い込んだ金属のような色合いの深みが加わり、

また、一つのうつわの中でも、

釉薬の発色に濃淡に差があり、手に取って光にかざすと、

いつまでたっても見飽きない、まさに一点物の魅力があります。

 

 

 

半磁器に描かれる細密な線画 - 鈴木美佳子さんのうつわ -<

 

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半磁器とは、土と石を混ぜた原料を使ったもので、

陶器の温かみのある柔らかなイメージと、

磁器の持つ滑らかさや強度を合わせ持つ、優等生です。

 

写真のうつわは、鈴木美佳子さんの手によるもの。

 

輪郭のはっきりした凜とした風合いですが、

触ると手に馴染み、クリームがかった素地に温かみを感じます。

 

一層目が惹かれるのは美しい藍色の線画。

 

細い針状のもので素地に線を彫り込み、

呉須と呼ばれる顔料を刷り込むことで、

くっきりとした細密な線画が描かれます。

 

目の粗い土には難しい作業となり、

磁器や半磁器だからこそ繊細に表現できる技法です。

 

大胆に配されたマンガン釉の茶色が温かみを添えており、

どんなお料理の盛り付けても様になるような、懐の深さを感じさせます。

 

 

 

 

石もの(磁器、半磁器)の取り扱い

 

石ものは、ガラス質で水が染み込みにくいため、

陶器のように、使い初めに目止めをする手間は必要ありません。

 

電子レンジや食器洗浄機の使用については、

一般的に可能だと言われていますが、

今回紹介したうつわたちの中には、繊細なつくりのために、

使用不可のものもあります。

 

ご購入の際には、商品に作家別の説明書を添えていますが、

ご質問があれば、店のスタッフにお気軽にお尋ねください。

 

 

 

いかがでしたか。

 

量産のイメージが強い「石もの(磁器・半磁器)」ですが、

 

作家さんたちによる丁寧な作業や技法の工夫から生み出される、

豊かな表情を持つ、魅力的な作品がたくさんあります。

 

一つ一つの個性。

他にはない、唯一無二のもの。

 

お読みくださっているあなたにとっての、

素敵な唯一無二のうつわが、

いつかあなたと巡り合えますように。

 

 

 

 

 

 

*ころはオンラインストア

当ショップでは、生活に寄り添った作家のうつわと道具を取り扱っています。

「作り手」と「使い手」を繋げる、そこでしか出会えない、そんな価値のある店を目指して営んでおります。

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